【2026年度最新】大規模修繕で最大200万円補助──11月閣議決定の予算案と「適正見積」で確実に受給する方法
投稿日:2025年11月25日
「修繕積立金だけでは足りない」「工事費が高騰していて予算が組めない」──そんな悩みを抱える管理組合の方々に朗報です。
2024年11月22日、政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定しました。この中で、住宅・建築物の省エネ化支援が大幅に強化され、令和6年度補正予算案に盛り込まれました。
さらに、2026年度予算の概算要求総額は122兆4,454億円と過去最高額を更新。国土交通省の住宅局関係では前年度比1.20倍の2,068億円が計上され、既存ストックの省エネ改修やバリアフリー化への支援が一層充実します。
しかし、補助金を受給するには「適正な見積書」が必須条件です。曖昧な見積では申請が通りません。本記事では、2026年度に向けて活用できる補助金制度の最新情報と、確実に受給するための見積のポイントを解説します。
目次
2026年度に向けて利用可能な補助金──最大200万円/戸の支援も
大規模修繕で活用できる補助金は、国の制度と自治体の制度に大きく分かれます。ここでは、2026年度に向けて利用可能な主要な補助金をご紹介します。
【国の3省連携】住宅省エネ2025キャンペーン
国土交通省・経済産業省・環境省が連携し、ワンストップで申請可能な補助制度が整備されました。複数の補助金を組み合わせて利用できるのが大きな特徴です。
1. 断熱窓への改修促進事業(環境省)
- 補助額:最大200万円/戸
- 対象:高断熱窓(熱貫流率Uw1.9以下等)への改修工事
- 内容:内窓設置、外窓交換、ガラス交換
- 補助率:工事内容に応じて定額交付(補助率1/2相当等)
- 令和6年度補正予算案:1,350億円
マンションの共用部分(エントランス、廊下の窓など)も対象となります。冬の結露対策や夏の冷房効率向上に加え、補助金を活用できる絶好の機会です。
2. 高効率給湯器導入促進事業(経済産業省)
- 対象:エコキュート、エネファーム、ハイブリッド給湯器等
- 補助額:機器・性能ごとに定額支給
- 加算補助:寒冷地で蓄熱暖房機や電気温水器を撤去する場合
- 令和6年度補正予算案:580億円
3. 子育てグリーン住宅支援事業(国交省・環境省)
- 対象:ZEH基準を大きく上回る省エネ住宅(GX志向型住宅)の新築
- 対象世帯:子育て世帯(18歳未満の子を有する世帯)、若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが39歳以下)
- 補助額:住宅の性能に応じて設定
- リフォーム:省エネ改修工事にも対応
- 令和6年度補正予算案:1,850億円
【国土交通省】長期優良住宅化リフォーム推進事業
良質な住宅ストックの形成を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームを支援する事業です。
- 対象:劣化対策、耐震性、省エネ性、維持管理・更新の容易性等の性能向上工事
- 補助率:工事費の1/3等
- 補助限度額:100万円/戸~250万円/戸(工事内容により変動)
【地方自治体】独自の補助金制度
国の補助金に加えて、各自治体が独自の補助制度を設けています。主な対象工事は以下の通りです。
- 耐震改修工事:旧耐震基準(昭和56年5月以前)の建物が対象
- バリアフリー化工事:スロープ設置、手すり取り付け、段差解消等
- 劣化診断費用:大規模修繕前の建物診断費用
- アスベスト除去工事:吹付けアスベストの調査・除去費用
- 省エネ改修工事:外断熱改修、LED照明設置等
例えば、東京都中央区では「分譲マンション共用部分改修費用助成」として、工事費の一部を助成しています。自治体によって制度内容が大きく異なるため、マンション所在地の自治体窓口に確認することをおすすめします。
補助金申請の”落とし穴”──「一式」表記では申請が通らない
ここで重要なのが、補助金申請には「詳細で適正な見積書」が必須という点です。多くの管理組合が見落としているのが、この見積書の要件です。
補助金申請で求められる見積書の条件
補助金の交付申請では、以下のような詳細な情報を含む見積書が求められます。
- 工事項目の明確化:「外壁改修工事 一式」ではなく、「下地補修」「ひび割れ補修」「塗装工事」と分解
- 数量の具体的記載:「◯◯㎡」「◯◯箇所」など、測定可能な単位での記載
- 単価の明示:材料費と工賃の内訳、単価の根拠
- 使用材料の仕様:メーカー名、型番、性能(断熱性能等級など)
- 補助対象工事の明確な区分:補助対象となる工事とならない工事の切り分け
なぜ「一式」表記では申請が通らないのか?
補助金の審査では、補助対象工事に本当に必要な費用が適正に計上されているかを厳密にチェックされます。「一式」表記では以下の問題が生じます。
- 補助対象工事と対象外工事の区別がつかない
- 工事の妥当性を審査できない
- 補助金額の算定根拠が不明確
- 過剰な工事費が含まれている可能性がある
実際、国土交通省の補助事業では「諸経費、設計費、送料、交通費、廃材処理費、管理費、調査費、消費税等は補助対象外」と明記されています。これらが「一式」の中に紛れ込んでいると、申請が却下されるリスクが高まります。
見積査定が重要な3つの理由
理由1:補助金の申請要件を満たす見積書に整える
一級建築士などの専門家が見積書をチェックすることで、申請要件を満たす形式に整理できます。数量の計算ミス、単価の妥当性、工事項目の区分など、細部まで精査します。
理由2:不要な工事を削減し、補助対象工事に予算を集中
見積査定によって「今やるべき工事」と「先送りできる工事」を明確にします。限られた予算を補助金が活用できる工事に優先的に配分することで、補助金の効果を最大化できます。
理由3:業者との交渉材料になる
第三者の専門家による査定結果があれば、業者との価格交渉や工事内容の調整がスムーズに進みます。「補助金申請のためにこの形式で見積を作り直してほしい」という依頼も、根拠を持って伝えられます。
実例:見積査定で補助金申請が通ったケース
ケース1:外壁修繕450万円→380万円削減+省エネ補助金活用
状況:築25年、60戸の中規模マンション。外壁修繕の見積が450万円で提示されたが、修繕積立金だけでは不足。
見積査定の結果:
- 不要な工事項目(過剰な足場設置期間など)を削減
- 材料のグレードを見直し(性能は維持したまま)
- 工事費を380万円に圧縮
補助金活用:
- 削減した70万円を使って、窓の断熱改修を追加
- 「断熱窓への改修促進事業」で補助金50万円を獲得
- 実質的な負担額:450万円→330万円(120万円の削減効果)
ケース2:窓改修での補助金200万円獲得事例
状況:築30年、80戸の大規模マンション。共用廊下の窓からの結露がひどく、冬場の光熱費も高騰。
当初の見積:
- 窓交換工事:600万円
- 「サッシ工事 一式」という曖昧な表記
- 補助金申請を想定していない見積
見積査定後:
- 工事内容を詳細化(窓の性能、サイズ、数量を明記)
- 高断熱窓(Uw1.9以下)の採用を提案
- 補助金申請に必要な仕様書・図面を整備
結果:
- 「断熱窓への改修促進事業」で200万円の補助金を獲得
- 実質負担額:600万円→400万円
- 年間光熱費も約15%削減(入居者にも還元)
2026年度予算を見据えた今からの準備スケジュール
補助金を確実に活用するには、計画的な準備が不可欠です。以下のスケジュールを参考に、早めの行動をおすすめします。
2024年12月~2025年2月:見積取得・査定・計画策定
- 複数の業者から見積を取得
- 見積査定サービスを利用し、適正性をチェック
- 利用可能な補助金制度を確認
- 補助金申請を前提とした見積書に整理
- 長期修繕計画の見直し
2025年3月~4月:総会承認・補助金申請準備
- 管理組合総会での工事計画承認
- 補助金申請に必要な書類の準備
- 施工業者の確定(補助事業者として登録されている業者を選定)
- 補助金事務局への事前相談
2025年5月~:補助金申請・工事着手
- 補助金の交付申請(予算は先着順で締め切られることが多い)
- 交付決定通知後、工事着手
- 工事完了後、実績報告書を提出
- 補助金の交付(工事完了後の後払い)
注意点:補助金は予算額に達すると募集期間中でも締め切られます。2024年度の「子育てグリーン住宅支援事業(GX志向型住宅)」はわずか3ヶ月で受付終了となりました。早めの準備が成功の鍵です。
「適正見積」で補助金を確実に──見積査定サービスの活用
ここまで見てきたように、補助金を確実に受給するには「適正な見積書」が不可欠です。しかし、管理組合だけでこれを判断するのは困難です。
見積査定サービスでできること
1. 補助金申請要件を満たす見積書への整理
- 「一式」表記を詳細な項目に分解
- 数量・単価・仕様の明確化
- 補助対象工事と対象外工事の明確な区分
- 申請に必要な書類(仕様書、図面等)の整備支援
2. 不要な工事の削減と予算の最適配分
- 過剰な工事項目の指摘
- 補助金が活用できる工事への予算集中
- 長期的な視点でのコスト削減提案
3. 業者との交渉サポート
- 見積内容の説明・確認を代行
- 補助金申請に必要な見積形式への変更依頼
- 価格交渉の同席・代行
査定費用の目安
- 見積査定:10,000円~(見積明細5ページ程度)
- 査定認定証の発行:10,000円(見積の妥当性をA~Dでランク付け)
- 業者への説明同行:30,000円~(交通費・出張費込み)
※建物規模・修繕内容により金額が変動します
まとめ──2026年度の補助金を逃さないために
2026年度に向けて、住宅・建築物の省エネ改修への支援は過去最大規模に拡充されています。しかし、補助金を受給できるかどうかは「適正な見積書」にかかっていると言っても過言ではありません。
重要なポイント:
- 補助金は「一式」表記では申請が通らない
- 数量・単価・仕様の明確化が必須
- 見積査定で不要な工事を削減し、補助対象工事に予算を集中
- 補助金は予算枠に達すると締め切られるため、早めの準備が重要
- 工事費の削減と補助金の活用で、数百万円単位の負担軽減が可能
「修繕積立金が足りない」「工事費が高すぎる」と悩んでいる管理組合の方は、まず見積の適正性をチェックすることから始めてみてください。適正な見積があれば、補助金申請もスムーズに進み、修繕費用の大幅な削減が実現できます。
A.t.oathでは、一級建築士が第三者の立場で見積を査定し、補助金申請に向けた準備をサポートしています。LINEでの気軽な相談も受け付けていますので、まずはお問い合わせください。
また、建物維持修繕顧問/マンション修繕のセカンドオピニオンサービスも展開しております。
見積書の査定だけでなく、建物の維持・修繕に関わる一式について、専門家としてコンサルティングさせていただくことも可能となります。
2026年度の補助金を確実に活用し、安心・安全な大規模修繕を実現しましょう。