大規模修繕は“談合”前提?──現役建築士が語るマンション修繕の裏側
投稿日:2025年6月30日

「3社から見積を取ったのに、なぜかどれも同じような金額だった」
「管理会社の紹介業者しか選択肢がなかった」
──そんな経験、ありませんか?
これは、マンションの大規模修繕に潜む“談合”の可能性があるケースです。
談合とは、複数の業者が競争せずに価格や工事内容を調整し合う行為。公平な競争が行われず、住民が不利益を被ることになります。
本記事では、現役の建築士としての実体験を交えながら、マンション修繕における談合の構造・見分け方・対処法を解説します。
目次
なぜ、談合が起きるのか?
大規模修繕には平均して数千万円〜億単位の予算がかかります。理事会メンバーは1〜2年の持ち回りであることが多く、専門的な知識もない中で、業者選定や工事判断を任されることになります。
その隙間に入り込むのが、「管理会社」と「施工業者」との“なれ合い”です。
過去の経験上、以下のような構図が談合を生む温床になっています:
- 管理会社が推薦する業者に発注が集中
- 相見積もりと言いつつ、業者同士が“手の内”を共有している
- 工事仕様書が曖昧で、価格競争にならず横並びの見積になる
特に「発注の構造が見えない」状態での業者選定は、住民の利益よりも“内部の都合”で話が進んでしまうことがあります。
現場で感じる「おかしな見積」の共通点
実際に私が相談を受けた現場では、次のようなケースが多くありました。
ある現場では、3社の見積がまるでコピーのように似通っており、差額は120万円。よくみると項目は一緒なのに、数量がほぼ全て、ちょうど10%ずつ上乗せされていました。
また別の現場では、事前に工事内容がすり合わせられていたようで、理事会に説明を行うのも「施工会社の人間のみ」。管理会社はそれを止めるどころか、業者の代弁のような態度でした。
これはまさに「談合の構図」であり、第三者の視点を入れない限り、住民はそれに気づく術がありません。
“談合”かもしれない──そう思ったときにできること
まず、価格や書式の似通い方に違和感があれば、それは貴重なサインです。以下の対策が有効です。
- 見積を「同じ条件・同じ書式」で依頼し、内容差を精査できるようにする
- 理事会に建築士や外部コンサルタントを招聘し、業者側の説明に対抗できる“第三の視点”を持つ
- 工事の必要性や範囲を理事会で把握し、仕様の主導権を持つ
大事なのは、「価格」ではなく「中身」で判断するという視点を住民側が持つことです。
A.t.oathの見積査定サービスとは?
A.t.oathでは、一級建築士・建築施工管理技士による中立的な見積チェックを提供しています。
見積書の内容を工事項目・単価・数量単位で精査し、「この項目は過剰では?」「同じ内容が2重に計上されていないか?」などをプロの視点から判断します。
LINEやPDFでの提出にも対応し、管理組合・理事会からの相談も増加中。
「業者の話をうのみにしていいのか?」と迷ったとき、客観的に判断する材料を提供します。
まとめ:住民が“主体”にならなければ、誰も守ってくれない
談合を防ぐ最大のポイントは、管理組合が「主導権を持つ」ことです。
そのためには、見積の中身を理解し、価格の裏にある根拠を読み取る力が必要です。
「談合かもしれない」と感じた時点で、中立なプロに相談することをおすすめします。
1,000万〜数億円単位の工事だからこそ、“分からないまま任せない”ことが、後悔しない修繕への第一歩です。